メモピクを運営している立場として、競合調査を兼ねて他社の英単語アプリを定期的に試しています。先日、広告収益で運営されている無料の英単語アプリをしばらく使い込んでみました。
同じタイプのアプリを楽しく使っている方もたくさんいると思います。以下はあくまで、一人の運営者がユーザーとして使ってみた個人の感想として読んでください。
先に結論を言うと——楽しかったです。よくできているとも思いました。ただ、使えば使うほど「この時間は、ちゃんと力になっているだろうか」というもやもやが残りました。この記事は、その違和感の正体をたどりながら、英単語学習における「正しい努力」とは何かを考えたものです。
「無料」の支払いは、広告を見る時間で行われている
そのアプリはお金を取りません。その代わり、学習の合間に広告が流れます。1回は数十秒。スキップできないものもあります。
ユーザーとしては「無料で使えてありがたい」と感じます。私も最初はそうでした。でも冷静に振り返ると、私の学習時間の中には、広告を見ている時間が確かに混ざっていました。1回あたりは数十秒でも、毎日のことなので積み重なっていきます。
広告で無料を支えること自体は、まっとうなビジネスモデルです。責めるつもりはありません。ただ、「無料」の意味は正確に捉えておく価値があると思うのです。お金の代わりに、貴重な学習時間で支払っています。そして単語の習得において、時間はお金よりずっと取り返しのつかない資源です。忙しい合間に確保した10分の一部が広告に消えているなら、その時間の使い道は、一度立ち止まって考えてみる価値があります。
「楽しい」と「身につく」は、意外と別物
もうひとつの違和感は、学習の中身そのものです。
やっている内容は、ほとんど早押しクイズでした。表示された単語の意味を4択から選ぶ。速く答えるほどスコアが伸びる。テンポが良く、正解の演出も気持ちいい。ゲームとしての完成度は高いと思います。
ただ、数日続けて気づいたことがあります。知っている単語ばかりが、何度も出てくるのです。私はすでに知っている単語を反射的にタップしてスコアを伸ばし、「今日もやった」という満足感を得ていました。そして1日の終わりに、知らなかった単語がどれだったかを思い出せませんでした。
単語学習で本当に時間を使うべき相手は、「まだ覚えていない単語」や「忘れかけている単語」です。すっかり覚えている単語を高速で正解し続けるのは、気持ちいい一方で、記憶はほとんど増えていません。しかも、最初から選択肢が並んでいて速さを競う形式は、いつの間にか「単語を覚える」という本来の目的から離れて、速く正解すること自体が目的のゲームになっていきます。そこには「何も見ずに思い出す」練習が、ほとんどありません。この「見ればわかる」と「思い出せる」の違いについては、単語カードの正しい使い方で詳しく書いたとおりです。
使い終えて残った問いは、「これを1年続けたとして、成績が上がった自分を想像できるか」でした。私の場合、自信を持って首を縦に振れませんでした。
連続記録の数字は、何を数えているか
そのアプリでは、連続学習日数をワンタップでSNSにシェアできました。実際、SNSでは「連続300日」のような投稿をよく見かけます。
継続そのものは素晴らしいことです。それは本心から思いますし、毎日学習を続けられる人の継続力は、それだけで本物です。ただ、連続記録が教えてくれるのは「学習した日数」であって、「その日数の分だけ力がついたか」ではありません。極端な話、知っている単語の早押しだけで毎日を積み重ねても、記録は同じように伸び続けます。
そして、この機能がくすぐっているのは、記憶よりも「認められたい気持ち」なのかもしれません。連続日数は数字として立派に見えるし、シェアすれば「すごい」「頑張ってるね」と反応がもらえる。それ自体は悪いことではないのですが、「覚えられた」という手応えの代わりに「認められた」という報酬で学習が回っていると、数字と実力のあいだに少しずつ差が開いていくことがあります。
正直に書くと、メモピクにも連続記録があり、SNSにシェアする機能もあります。「誰かに認められたい」という感情も、日々の前進を支える立派な燃料だからです。だからこそ、数字の中身には作り手として責任を持ちたい。メモピクでは、連続日数の1日1日の中心に、まだ覚えていない単語と「思い出す練習」で向き合う時間が来るように設計しています。連続日数が伸びた分だけ実力も伸びている、と胸を張れる数字にしたい——同じ連続記録でも、その価値は1日の中身で変わってくると考えています。
続けているのに身についている実感がない——もしそう感じることがあっても、それはあなたの努力が足りないからではありません。広告で収益を支える設計は、どうしても「毎日開いて広告を見てもらうこと」に引っ張られやすく、努力の向け先がずれやすい、というだけの話です。見直すべきは、注ぐ努力の方向です。
楽しさは「燃料」であって「目的」ではない
誤解しないでいただきたいのですが、「学習アプリは楽しくあるべきではない」と言いたいのではありません。むしろ逆です。楽しくなければ続かないし、続かなければ身につくものも身につかない。メモピク自身、キャラクターが育ち、冒険マップが進む、ゲームのような仕掛けをたくさん入れています。
考えたいのは、その楽しさが何を運んでいるかです。楽しさが「思い出す練習」や「まだ覚えていない単語との対面」を運んでいるなら、それはそのまま学習です。楽しさが「知っている単語の早押しと広告視聴」を運んでいるなら、楽しい時間ではあっても、記憶はあまり増えていないかもしれません。
自分の使っているアプリがどちらかは、シンプルなチェックで確かめられます。
- 1週間使って、「新しく意味を言えるようになった単語」を10個挙げられるか
- 知らない単語に、知っている単語より多くの時間が使われているか
- 選択肢を見る前に「思い出す」場面があるか
- 学習が広告で中断されないか
挙げられなくても、落ち込む必要はありません。続ける力があるなら、あとは向け先を変えるだけです。同じ10分を、まだ覚えていない単語に「思い出す練習」で向き合うことに使う。これが、この記事で言いたい「正しい努力」のすべてです。アプリを選ぶときの軸は無料の英単語アプリはどこまで使える?にまとめています。
いま続けている学習で、力がついている実感はありますか
すでに何かのアプリや単語帳で学習を続けている人にこそ、あえて問いかけてみたいことがあります。本当に力がついていますか。成績は、上がっていますか。
胸を張って「はい」と答えられるなら、いまのやり方は正しいはずです。何も変える必要はありません。そのまま続けてください。でも、もし答えに少し詰まるなら——学習が「楽」な方へ流れているサインかもしれません。
ここで区別したいのは、「楽しい」と「楽」は別ものだということです。楽しさは、ここまで書いてきたとおり、続けるための大切な燃料です。一方の「楽」は、負荷のなさです。知っている単語の早押し、眺めるだけの復習、それでも気持ちよく伸びていく数字。どれも心地よいのですが、記憶は「思い出せた数」でしか増えません。負荷のない学習は、続けるほど楽になっていく代わりに、力がつく速さもゆるやかになっていきます。
幸い、続ける力はすでにあります。必要なのは、成長を促すほんの少しの負荷です。楽なだけの学習から一歩踏み出す時かもしれません。
メモピクが本気で考えているのは「好成績」です
メモピクに広告はありません。大切な時間を、広告の視聴に奪われてほしくないからです。運営基盤には月330円のスタンダードプランを採用しました。無料プランのままでも、学習が広告で中断される心配はありません。
そしてもうひとつ、メモピクが本気で考えているのは、楽しさの先にある「好成績」です。単語を入力するとAIが記憶に残りやすいイラストを生成し、それを手がかりに「思い出すテスト」で覚えていく形式です(この覚え方の根拠はイメージ記憶の科学と実践5ステップに書きました)。クイズも、選択肢を見せる前に「思い出す時間」を挟み、出題はまだ覚えていない単語と復習期日が来た単語が中心。一度「覚えた」扱いになった単語も、クイズで間違えれば復習に戻します。この記事で書いた落とし穴を、自分たちが踏まないための設計です。キャラクターや冒険マップの楽しさは、あくまでこの練習を毎日続けるための燃料です。目指すゴールは、テストや仕事で結果を出し、英語力を自分のものにすることだと考えています。
学習の中身にここまでこだわるのには、理由があります。私自身が、英語で好成績を収めたことで人生が好転した経験を持っているからです。結果を出したことで自信がつき、選べる道が広がりました。同時に、そこへたどり着くまでには、楽なだけの学習で遠回りした時間もありました。何が力になって、何が無駄だったのか——その経験から得たノウハウを、メモピクには惜しまず詰め込んでいます。
では、好成績を収めると、その先で何が起きるのか。その答えは、メモピクに登録して冒険を進めた先の特典として、じっくり書きました。学習を重ねて冒険マップを進むと、節目ごとに「なぜ英単語を学ぶのか」「好成績がその先をどう変えるのか」といったテーマの特典記事が手に入ります。ぜひ会員登録して、冒険を進めながら確かめてみてください。
まとめ
- 広告型の無料アプリでは、お金の代わりに時間で支払っている。単語学習でいちばん貴重なのは時間
- 知っている単語の早押しは気持ちいいけれど、記憶はあまり増えない。時間を使う相手は「まだ覚えていない単語」
- 連続記録は励みになる一方で、「続けた日数」と「ついた力」は別もの。数字の分だけ覚えられているか、ときどき確かめたい
- 楽しさは続けるための大切な燃料。その楽しさが「思い出す練習」を運んでいるかが、正しい努力の分かれ目
- 「楽しい」と「楽」は別もの。力がついている実感がないなら、楽な学習から少しだけ負荷を戻してみる
続ける力は、それだけで大きな才能です。その努力を正しい向け先へ——あなたの10分を、まだ覚えていない単語のために使ってください。
